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アイスクリームのお皿

カルチャー中心。日々思うこと、あらゆるものの記録

【映画】カリコレ2016『ライオット・クラブ』(新宿シネマカリテ)

新宿のシネマカリテで毎年開催されている「カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション」通称カリコレ。
気になっていたものの行けずじまいだったのですが、今年ようやく行ってきました。

【カリコレ2016】カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2016

 

 

『ライオット・クラブ』ロネ・シェルフィグ(2014年/イギリス/107分)



英国、名門オックスフォード大学、上流階級のなかでも選ばれた10人のエリートしか参加を認められない、秘密の会員制クラブ――。


この謳い文句で条件反射的に興味をもった方は多いのではないでしょうか。私もその一人です。ひとつのジャンルとして立派に成り立っている「英国男子」は人並みに好き(贔屓の俳優はいるけど)程度の私が反応したくらいなので、その畑の皆さまは期待して観たのではないかと思います。
若手イケメン俳優が10人揃っているというのも楽しみ。ミーハーな気持ちを刺激するエッセンスがふんだんに使われていて、予定を立ててチケットを取るまでスムーズに進みました。

ただ、キャッチフレーズには惹かれるけど映画自体にさほど期待しておらず、また二次創作の対象になったりするのかなあとぼんやり考えていました。
これがとんでもない勘違いであることに、鑑賞前の私は気付く余地もなかった……。(ジャンルとして楽しんでいる方がいたらすいません)。

 

まず言いたいのは、この映画は鑑賞前と鑑賞後でライオット・クラブの10人に対する評価が180度変わるということ。それも悪い方向に!
鑑賞前:ポスターかっこいい!パネルに混ざって写真撮りたい
鑑賞後:絶対貼りたくない(部屋の品位が下がる)、むしろ破きたい

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ひとことで言ってしまうと不快。萌える余地などどこにもありません。まさにゲスの極み

特に中盤(晩餐会)からの下劣っぷりがひどい。そこからはもう雪だるま式に悪ノリがエスカレートしていき、どん引きするシーンが続出。イケメン補正は皆無です。
狂宴は店主への暴行によって強制的に終わりを迎える。取り返しのつかないところまで来ないと終わることができないところがまさに子ども。

おそらく全員の頭の片隅に「これはまずい」という意識が多かれ少なかれあったはずだけど、誰にも止めることができなかった。その場を支配する空気、伝統あるクラブの圧力、恥をかきたくないという焦り、上流階級のプライドなど、大きな力のうねりに飲み込まれるまま暴走した彼らはなんて幼いんだろう。


病院で「誰に暴行されたか覚えてる?」という娘の問いに、店主が
「わからない。全員同じに見えた」
と答えたところがとても印象的だった。

荒れ放題の部屋で、血のついた礼服のまま、疲弊した顔で警察が来るのを待つシーン。悪いことをして大人の裁きを待つ姿はくそガキ以外の何者でもなく、鑑賞前は一人一人きらめいて見えたのに、全員同じに見えた。全員ゲスだった。

ただし、鑑賞後ずっと後を引くような暗くて重い感覚はなかった。胸くそ悪いのは間違いないけど規模が小さい感じ。それは彼らが本当にただの子どもに過ぎなかったからかもしれない。あるいは監督の意図か。


そしてザ・清涼剤こと特典映像の役者インタビューは、ジョージ(+会長)とディミトリ(+マイルズ)の二人。
当たり前だけど、ごく普通の感じのいい男の子たちだった。特にジョージのインタビューに口を挟む会長が可愛い。仲良さそう。それぞれ「同世代の俳優たちと演技ができたのはとても楽しかったし、刺激的だった」と語っていたのもよかった。
これを上映前に流してくれたおかげで、インタビューに出ていた彼らは他の子よりちょっとだけ好意的に見られた気がする。まあクズ役であることに変わりはないんだけど。


この映画でしみじみ考えたのは「誠実さ」について。
店主が「金じゃない、誠意の問題だ」というシーン、彼らは言葉の意味を理解できていないんですよね。誠実という言葉から一番かけ離れた連中の集まり、それがライオット・クラブだから。
彼らは頭脳も金も権力も容姿も、世界でトップクラスに恵まれたものを持っている。それは素晴らしいことなのに、誠実さが欠けるとこんなに傲慢で醜い姿に成り果ててしまうのね……。
誠実さを持ち合わせていることは、人間にとってもっとも重要なことの一つなんじゃないでしょうか。

そしてアリステアがぶちまけたように、彼らの抱えていた鬱憤は「上流階級社会」に対する世間がなんとなく持っているイメージから生まれてしまったんだなとも思う。それはきっと幼少期から感じていたもので、払拭するのは難しいだろうな。

選ばれたエリートであることを最大の拠り所としながらも、それによって無意識のうちに自分を追い込んでいるようにも見えます。

 

彼らと対極の存在として誠実な人々も描かれていて(パブの店主と娘、マイルズの彼女ローレンなど)彼らのまっとうさがまぶしい。ごく普通の人たちだけどクラブの連中が澱み過ぎていて、普通の人の感覚というのが新鮮な空気みたいに思えます。
私は一般人なのでエリートたちに共感することはできなかったけど、彼ら側の視点で観た方もいるんでしょうか?

上流階級の方々がこれを観て何を感じたのかすごく気になる。いや、観ないか。どうだろう。

ローレンやコールガールなど女性に対する扱いがひどいけど、彼女たちは気高く、男に屈しない姿で描かれていたのも救いだった。
ちなみに ”Up to you.” は男が女に言うくそセリフ2016ベストとして胸に刻まれました。


以下、気になったキャラの感想。

 

マイルズ
ガタイよくて温厚そうな顔つきで、ジョックス顔だよね。今回はクラブの中でいちおう一番まともな役だったけど、アメフト部のいじめっ子とか嫌味な役も似合いそう。
アリステア
歪んでるね!この子が一番内にため込む、発散がへたなタイプ。爆発させるまでずっと悶々としてたんだろうな。こういう家柄で優秀な兄がいるのはそれだけで不幸。
ハリー
セクシー、女好き担当。CVあてるなら諏訪部。
ジェームズ
会長!会長が一番好き。クラブの長であるからには肝の据わったえぐい奴かと思いきや、意外とへたれだったのがよかった。美人。水色のセーターめちゃくちゃ似合う。
ディミトリ
まともなこと言うと見せかけて金に物を言わせる超大金持ち。ギリシャ系。黒髪×色黒でぽってり肉厚な感じ、個人的にかなり好み。ハーレクインですか?

 

 

胸くそ悪いけれど「毎日を誠実に生きよう……」と思える反面教師映画です。

毒をもって毒を制す方式で、モヤモヤしているときに観るといいかも。