アイスクリームのお皿

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2016年の読書

もう2月、新年はもうすっかり今年として馴染んでしまったけど、2016年に読んだ本について振り返ってみたいと思います。

読んだのは60~70冊くらいで少なめ。今年はやるべきことで手一杯になりそうで、もっと減る予感がしている。

 

 

2016年の読書ベスト12【小説編】

1.尾形亀之助詩集』尾形亀之助

2.『私は彼の私』片岡義男

3.『にんじん』ジュール・ルナール

4.『こどもの情景』A・A・ミルン

5.『ヤモリ、カエル、シジミチョウ』江國香織

6.『ギケイキ』町田康

7.ヴェネツィアの宿』須賀敦子

8.『体の贈り物』レベッカ・ブラウン

9.『プールサイド小景/静物』庄野潤三

10.『台所のおと』幸田文

※読んだ順

 

以下、大まかな感想です。

いちおう話の核心に触れるようなネタバレはありません。

 

 

 

1.『尾形亀之助詩集』

 尾形亀之助のことばの選び方、世界をとらえる視線のすべてに新鮮なおどろきをもって肯くしかない。心が水をたたえた美しい硝子のコップみたいに静かになって、語ることばを失くす。解説でも似たようなことが書かれていた。(なお、解説の鈴木志郎康氏は81歳でツイッターやっててたまげた。)一番好きな詩人。どうか復刊してください。

 

 2.『私は彼の私』

秋は 綺麗にみがいたガラスの中です 尾形亀之助「秋」より)

まさにこんな感じの短編集。秋にぴったりの8編のなかで特に好きなのは『ブルー・マイナー』、『秋時雨』。前者はガラスの器と秋と男女の関係がシンプルに美しく描かれていて、読んでいるとこちらまで透き通る感じ。後者はサイモン&ガーファンクルの「アメリカ」に絡めた男女の会話が印象的。「私は虚ろで、痛みを覚えるほど何事かを切望してるのよ」というセリフに共感しかない。

 

3.『にんじん』

怖い! 『悪童日記』に似た怖さ。過不足なく事実のみが書かれている話は安心するか怖いかのどちらか(あるいは両方)になることが多い気がする。モグラを殺す話がすごくリアルだった。

 

4.『こどもの情景』

私にとって衝撃の一冊。どうしてこんなものが書けるのか? ミルンは子どもの視点で物語を書く天才だと思う。たぶん観察力が異常に鋭いんだろう。とりわけ『ベッドのなかの、ちっちゃなウォーターロー』には圧倒された。赤ちゃんが考えていることって、これが真理なんじゃないかな。大好きなル・メールの挿絵も最高。復刊してくれ~。

 

5.『ヤモリ、カエル、シジミチョウ』

信者といっても過言ではないくらい江國香織さんの大ファンで、完全に特別枠の作家なのでランキングから除外しようと思ったもののどうしても入れたかった一冊。江國さん、すごいところに来たなという感じ。ずっと書いてきた人じゃないと書けない物語だと思った。虫と話ができる幼稚園児・拓人と、その家族とそれを取り巻く人々のそれぞれの視点からなるお話。拓人の視点ではすべてひらがな表記で、読みにくいはずなのに全然気にならないおもしろさで、逆に世界がみずみずしく力強くみえる。

 

6.『ギケイキ』

町田康は才能の塊みたいな人だなあ。音楽もかっこいいし。フリーペーパーの書店員コメントで、『義経記』が彼の手によって爆笑歴史エンタメ『ギケイキ』に変貌する、みたいなことが書かれていた。まさにその通り。ファッションオタクの義経、メンヘラの弁慶など設定を聞いただけで読みたくなる。勢いがあるおもしろさっていいね。全4巻の予定らしい。

 

7.『ヴェネツィアの宿』

須賀敦子さんのことばは背骨がしっかりしていて恰好いい。エッセイなんだけど、ひとつひとつのエピソードが美しく年月を重ねた骨董品の宝石みたい。結婚してすぐに亡くしたイタリア人の夫をはじめ、もう二度と会うことのない人たちとの過ぎ去った思い出が閉じ込められている。『大聖堂まで』、『アスフォデロの野をわたって』がとりわけ印象的だった。

 

8.『体の贈り物』

映画「ショート・ターム」を観たときの感覚に近い。エイズ患者たちとホームケア・ワーカーである主人公の交流の記録という、やろうと思えばいくらでも陳腐に仕上げることのできるテーマを、シンプルなことばで余計なものを排除して書かれている。そこがとても信頼できる。私たちに必要なのは感動の押し売りではない。多くの人に読まれるべき本だなあと思う。同じ著者の『結婚の悦び』という短編もすごくよかった。

 

9.『プールサイド小景/静物』

村上春樹がおすすめしていたので読んでみたら、どストライクだった。『舞踏』、『プールサイド小景』はたくさん線を引きながら読みたいくらいハッとするところの多い傑作。とくに何が起こるわけでもない日常のなかの人間を、書きすぎず、かといって書かなさすぎず、絶妙な含みを持たせて淡々と書いている。なんでこんなの書けるのと言いたくなる描写がたくさん。

 

10.『台所のおと』

これも衝撃の短編集。読んでいるあいだ、何度もうっと刺されるような感覚があった。共感よりもっと強いなにか、自分のすべてがこれを知っている、これはわかると反応している感じ。ぜひ読んで刺されに刺されてほしい。死や病気が描かれている話が多い。映像的な美しさのある『雪もち』は年末に読んでぴったりだった。『祝辞』『呼ばれる』『おきみやげ』『あとでの話』が好き。